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「公園の中で働く」をコンセプトに再開発されたサイエンスパーク
訪問日時/
1997年10月6日(月)10:00−12:00
訪問先/
IBAEmscher Park GmbH
所在地/
Leithestrasse 35, 45886
Gelsenkirchen
Tel:0209-1703-0
Fax:0209-1703-298
先方応対者/Mr.Andreas Hippon
(Public Relation Department)
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1.IBAの概要
- IBAエムシャーパーク(Internationale Bauausstellung EmscherPark)は、ノルトライン・ヴェストファーレン州(デュッセルドルフ、ケルン等の都市が中心となるドイツの州)が推進する地域開発プロジェクトの一つ。
- 17の都市、250万人の人口、820平方キロメートルの面積を有するルール地方のエムシャー川流域の都市計画及び環境保全面での改善とその充実を図り、エムシャー地区に新たな経済発展の基礎を確立することを目的とした大規模プロジェクト。(かって石炭と鉄鋼で栄えた地域のエコロジカルかつエコノミカルな再活性化のための総合的な開発プロジェクト)
- 各種プロジェクトの主要テーマ:
- 都市間に存在する広大な遊休地を利用し、都市近郊に大規模なレクリ
エーション・保養地域を建設する。
- 350kmにおよぶ地上下水路を改善し、環境保全に優れたバイオロジカルな下水路を建設する。
- 工場跡地に公園の中のオフィスをコンセプトとした高水準の事業拠点を構築する。
- 新しい住居と暮らしの基本テーマに基づき、従来の炭坑・鉄鋼業関係の専用団地を改造し、環境に配慮した住みやすい新たな住宅地域を創出する。
- 産業史上の歴史的建造物を維持保存することにより、地域の歴史を
後世に伝え、また、既存の建物を再利用し、地域の構造改革に寄与する。
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IBA―GmbHは、各プロジェクトの計画及び調整を行う機関で、法的には有限会社の形態をとっているが、実質的には州が100%所有し、州政府の都市建設局が直轄する機関。
- IBAの資金源は、EUの補助金も含めて36ある由。開発する土地は、州の開発会社が買取り(例:テュッセンから200haの土地を1マルクで購入)、開発後、投資コストを乗せて市町村に売却する方式。IBAの設立は、1988年で現在までの総投資額は、約70億マルク。
IBA本部の職員数は29名で、本部の建物は、ラインエルベ鉱坑の旧変圧室を再利用したもの。周りは公園のような緑地帯。
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壮大なガラスのアーケード |
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2.Lichthofの視察概要
- IBA本部のすぐそばにあり、坑夫に賃金を支払う場所であった建物(旧賃金ホール)を州建設局の教育施設に改造した。
- 玄関を入ってすぐ、ガラス屋根の吹き抜けのホール(Lichthof)があり、各種のオブジェが展示されていて、小さな美術館に入った感じ。その周りと2階が事務室等。
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IBA本部の建物はラインエルベ鉱坑の旧変圧室。 |
Lichthofのホールはラインエルベ鉱坑の旧賃金ホール。 |
3.サイエンスパークの視察概要
- ゲルゼンキルヒェン市の学術研究パーク・プロジェクトの目的は、旧テュッセン鋳鋼工場とラインエルベ鉱坑の跡地である計28haの敷地を再開発し、将来の研究開発都市としての基礎を築くこと。
- (上記のIBA本部とLichthofはラインエルベ鉱坑の跡地にあり、このプロジェクトの一部)
- プロジェクトの中心となるサイエンスパークは、テュッセン工場の跡地に建てられ、その特徴は、最大限のコミュニケーションスペースを作り出すことと、理想的なエネルギー効率を目指すコンセプト。
- 長さ300mに及ぶガラスのアーケードが、展示会等各種のイベントにも使われるようコミュニケーションの軸として施設の中核となっている。傾斜したファサードの鉄骨とガラスの窓枠は電動で上方に動く仕掛けとなっているため、夏は涼しく、冬は暖かいという環境が保たれる。
- このアーケードが9棟から成る3階建ての研究パビリオンを結び付けている。
- 建物の外に付随している池は、雨水を貯蔵するものとして構想され、屋根平面には210キロワットのソーラー発電設備(EUの補助金も利用)が設置されている。
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4.感想
- 再開発地域において、IBA本部ビルとLichthofのように周辺環境と調和する建物は残して使う例とサイエンスパークのように思い切って斬新な建物を造る対照的な例をみることが出来た。
- 両方に共通なのは、いずれも緑豊かな環境の中にあることで、特に、「公園の中で働く」をモットーに水平思考的・創造的な環境の提供を標榜するサイエンスパークが、今後どのように活用され、成果を生み出していくか注目される。
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