このレポートは、知識創造理論を実践するためのひとつの方法論を記したものであり、オフィスのマネジメントを通じて組織の知識創造を活性化するための具体的施策が企業経営者にむけて提示されています。
知識創造理論のエッセンスは、暗黙知と形式知というふたつの異なるタイプの知が、共同化(Socialization)、表出化(Externalization)、連結化(Combination)、内面化(Internalization)という4つのフェーズを経て相互循環する点にあります。
この相互作用プロセスをモデル化した「SECIモデル」は、暗黙知・形式知という認識論(エピステモロジー)の観点と、個人・集団・組織という存在論(オントロジー)の観点の両方を包含しています。
クリエイティブ・オフィス・レポートでは知識創造理論を基盤としつつ、個人の行動レベルに焦点を当てることで、個人が自らの実体験に照らして納得しやすいような「行動のSECIモデル」を作成しました。
これは、知識創造をおこなう人々のふるまいに着目し、SECIの4つのフェーズを、「刺激しあう」、「アイデアを表に出す」、「まとめる」、「自分のものにする」という平明な表現でおきかえたものです。
この行動のSECIモデルの各フェーズでそれぞれ3つの典型的行動を抽出したのが、「12の知識創造行動」です。
これら12の知識創造行動にとって重要な役割を果たすプラットホームについては、「クリエイティブワークプレイス」という概念を用いて検討を加えています。
適切なクリエイティブワークプレイスを提供することで、組織メンバーの12の知識創造行動の総量と連鎖速度が増せば、知識創造スパイラルは速く大きくなっていきます。これこそ知識創造を活性化するマネジメントが踏むべき道筋であるといえましょう。
本レポートが、多くの経営者の目に触れることを願ってやみません。
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2007年3月
知識創造を活性化するための新たなオフィススタイルのあり方に関する調査研究委員会
委員長 野中 郁次郎
●CREATIVE OFFICE REPORT v1.0の位置づけについて
クリエイティブ・オフィス・レポート1.0 (CREATIVE OFFICE REPORT v1.0)は、いくつかの先進的なオフィスの事例について調査し、クリエイティブ・オフィスの概念を構築したものです。
ニューオフィス推進協議会では今後、クリエイティブ・オフィスの概念をさらに深化させるような調査研究活動を行い、より内容の充実したクリエイティブ・オフィス・レポートのバージョンアップを展開します。
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