社団法人ニューオフィス推進協議会は、平成11年度生活文化産業対策調査の一環として、通商産業省の委託を受け、我が国のオフィス環境改善を推進するためのオフィス実態調査をまとめました。
この調査は、我が国の全産業就業者総数約6,500万人のうち、ほぼ半数を占めるオフィスワーカーが一日の相当な時間を過しているオフィスについて、知的生産の場であると同時に生活の場としてふさわしい快適で機能的なオフィス環境を実現するため、平成11年度は特に企業の情報化の現状と問題点並びにオフィスにおける生産性についての考え方を明らかにすべく、調査結果の分析、評価を行った上で、今後の課題を含めて、調査成果をとりまとめたものです。
平成11年度調査研究概要 |
1)配 布 先 ・企業調査 大 企 業(上 場 企 業) 1,000社
中小企業(非上場企業) 1,000社
・経営者意識調査
企業調査と同一の企業の経営者(社長) 2,000名
・オフィスワーカー意識調査
企業調査で回答のあった企業より 150社
抽出一社につき10名(150社×10名) 1,500名
2)調査実施時期 ・平成11年11月〜平成12年1月
3)回収状況 ・企 業 調 査 296社 (回収率: 14.8%)
・経営者意識調査 271名 (回収率: 13.6%)
・オフィスワーカー意識調査 429名 (回収率: 25.1%)
4)調査企業所在区分
・東京都 ・東京都以外の政令指定都市 ・その他の都市
1)ニューオフィスミニマム22項目の達成状況
「ニューオスィスミニマム」とは、(社)ニューオフィス推進協議会がオフィスづくりに当たり、法律や規則に定められている水準をクリアーした上で、オフィスとして最低限満たすべき項目を22項目にわたって示し、平成6年6月に公表したものである。
・ニューオフィスミニマムの達成状況
図1(項目別ニューオフィスミニマム達成状況)
・達成企業が多い項目
「暗騒音」 | 98.0% |
「照明環境」 | 94.6% |
「空調機器の運転管理」 | 82.4% |
「女性への配慮」 | 73.6% |
「グレア防止策」 | 72.6% |
「一人当たりの執務スペース」 | 71.3% |
「通路幅」 | 70.3% |
・達成企業が少ない項目
「休息・気分転換の場」 | 24.7% |
「FM」 | 25.3% |
「快適性の確保」 | 33.1% |
「高齢者・障害者への配慮」 | 34.5% |
「配線計画」 | 34.8% |
・達成割合が高まった項目(平成10年度比)
平成10年度 | → | 平成11年度 | |
「収納家具」 | 25.1% | → | 48.6% |
「室内空気の質」 | 53.1% | → | 66.9% |
「いす」 | 51.1% | → | 60.1% |
「省エネ・リサイクル」 | 30.5% | → | 39.2% |
「配線計画」 | 26.7% | → | 34.8% |
項目別の達成状況は、「収納家具」と「室内空気の質」の2つの項目で10ポイント以上の改善が見られ、回答のあった企業のニューオフィスミニマム22項目の達成状況は、昨年度の10.8項目に対し、本年度は12.1項目と改善の傾向がみられた。平成8年度からの経年変化をみても、わずかずつではあるが、ニューオフィスミニマムの達成度は向上してきている。
2)オフィス環境について
・自社オフィス環境に対する評価(オフィスワーカーの回答)
図2(ワーカーの満足度:企業規模別)
オフィスワーカーの自社オフィスに対する満足度は、満足派28.0%、不満派33.8%で、不満派が満足派よりも約6%多い。企業規模別では、中小企業に比べ、大企業のオフィスワーカーは、満足派、不満派ともに多く、中小企業は「普通」と回答するオフィスワーカーが多い。
・自社オフィスの評価(経営者の回答)
図3(経営者からみたワーカーの満足度:企業規模別)
自社のオフィスワーカーがオフィス環境をどう評価しているかを、経営者の立場から回答してもらった結果は、「満足している」と考えている経営者は、33.2%、「不満」と考えている経営者は、27.7%であり、オフィスワーカーの回答結果と比較して若干楽観的な傾向が見られる。
・オフィス環境の不満足点と改善要望項目(オフィスワーカーの回答)
不満足 | 改善要望 | |
「リフレッシュスペース等」 | 33.1% | 27.3% |
「社員食堂・喫茶」 | 30.3% | 21.7% |
「空調設備(温度・湿度・換気等)」 | 24.7% | 29.6% |
「収納スペース」 | 21.2% | 19.8% |
「トイレ・洗面・更衣室」 | 19.1% | 17.7% |
・オフィス環境の優先的改善項目(経営者の回答)
全体 | 大企業 | 中小企業 | |
「情報ネットワーク関連」 | 43.5% | 43.8% | 44.4% |
「情報化に対応したスペース」 | 29.9% | 26.6%
|
37.0% |
「空調設備(温、湿度、換気等)」 | 29.9% | 35.5% | 18.5% |
「レイアウト」 | 28.8% | 31.4% | 23.5%
|
「収納スペース」 |
28.8% | 30.8% | 30.9% |
「会議室スペース」 | 23.6% | 25.4% | 19.8%
|
経営者が、優先的に改善すべきと考えているオフィス環境項目は、大企業、中小企業とも1位は、「情報ネットワーク関連」と情報化の進展に伴う項目となっている。
・オフィス環境改善の実績(企業実態調査)
図4(企業規模別オフィス環境の改善実施状況)
企業規模別にみると、全般的に中小企業に比べ大企業の方が改善を実施している割合が多い。
3)情報化の進展によるオフィス環境への影響及び問題点
・パソコン等情報機器の普及状況(企業調査)
図5(情報機器の普及状況:企業規模別)
昨年度に比べると「一人一台またはそれ以上ある」が28.0%から44.3%へと増加しており、年々増加の傾向(ちなみに平成8年度は12.0%)にある。企業規模別では、大企業44.3%に対し、中小企業は44.5%でほぼ互角な普及割合となっている。
・ネットワーク化の状況(企業調査)
図6(社内ネットワーク進展状況:企業規模別)
ネットワーク化を図る企業は、昨年度45.0%に対し、本年度59.5%と着実に増加(ちなみに平成8年度は23.6%)している。特に大企業では、69.2%の企業が「全てがネットワーク化されている」としている。
・オフィスにおける疲労(ワーカー調査)
図7(情報機器に向う時間別のワーカーの疲労)
情報化の進展に伴い、パソコンに向っての長時間労働によるワーカーの疲労が問題となってきている。情報機器に向う時間別のワーカーの疲労は時間が長いほど増加する傾向であり。
疲労を感じる部位としては、多いものから「目(80.9%)」「肩(53.0%)」「精神的な疲れ(51.7%)」「腰(37.0%)」となっている。
図8(疲労を軽減する方策)
また、こうした疲労を軽減する方策としてワーカーは「空調の適正化(49.0%)」「リフレッシュスペースの設置(48.5%)」「仕事の仕方の変更、改革(34.0%)」「良好なコミュニケーション(31.7%)」等を上げている。
4)オフィスにおける生産性(企業、経営者、ワーカー調査)
今年度は、オフィスにおける生産性を「オフィスで働くオフィスワーカーが“効果的な成果”をいかに“効率よく”生み出すか」と定義し、企業、経営者、ワーカーにそれぞれアンケートをとった。
・オフィスにおける生産性向上の余地
経営者、企業、ワーカーでは生産性向上の余地ありということの認識としては差が見られ、職位が上がるほど生産性についての関心が高まり、かつ現状のオフィスの生産性をたかめていかなければならないという意識が強くなる。三者の余地ありと回答した人達にその改善余地の程度をきたところ約2割という共通した認識であった。
図9(オフィスにおける生産性向上の余地)
・生産性向上の阻害要因
阻害要因としては「情報化の遅れ」を経営者が一番に上げていた。ワーカーは「組織風土の古さ」を一番にしているのと「ワーカー自身のモラルの低さ」と自己反省している点が注目される。対策に関して、経営者はやはり「情報化の強化」を一番と考えている。それに続き「人事評価基準の明確化」、「目標管理制度」、「研修制度」があがっていた。ただし、パソコンの導入だけで、情報リテラシーのフォローアップがなければ、生産性は向上しないという点は自由回答のなかからもうかがえる。
図10(生産性向上の阻害要因)
・オフィス環境の改善実績とオフィスワーカーの不満足点
グラフの企業の改善実績が前述の企業調査の数値と違っているのは、ワーカーからの回答があった企業だけ抽出しているからである。このグラフからワーカーの不満足点と企業の改善項目の間にはギャップがあることが見て取れる。
図11(オフィス環境の改善実績とオフィスワーカーの不満足点)
・企業のオフィス環境の整備状況による分析
「生産性を向上させるための前提条件としての快適性、機能性、安全・健康面に配慮したオフィスが整備された状況にあるかどうか」という設問に対し、「オフィスが整備されている」と「整備されていない」と回答してきたそれぞれの企業が達成しているニューオフィスミニマムの項目数は明らかに「整備されている」と回答した企業の方が上回っている。ちなみに、「整備されている」企業は15.32項目であるのに対し、「整備されていない」企業では10.17項目となり、その差は5項目強にも登る。
図12(ニューオフィスミニマム達成項目数)